「綾瀬はるか 「戦争」を聞く」(TBSテレビ『NEWS23』取材班編)

戦争にかかわる本の「入門書」

「綾瀬はるか 「戦争」を聞く」
(TBSテレビ『NEWS23』取材班編)
 岩波ジュニア新書

「戦争」と向き合うのは
容易なことではありません。
大人であっても若い人であっても。

本書は、今をときめく
女優・綾瀬はるかさんが
戦争体験者の方々へ
取材を行った記録です。
TV番組の内容を
再構成したものと思われます。
高齢となられた方々の
悲惨な戦争体験に、
綾瀬さんが若者の代表として
真摯に接する姿に
心を動かされます。

戦後約70年が経過し、
戦争を経験した方々は
だんだんと少なくなっている現在です。
このような形で
戦時中の話を聞くことが
ますます重要なことに
なってきています。

本書で取材に
応じられた方々のみならず、
戦争を経験された多くの方々に
共通しているのは、
「できれば戦争の
体験談は話したくない」という
気持ちなのだと思います。
思い出したくないほど
辛い過去の経験を、
まるで記憶から
絞り出したような述懐の数々。
読んでいて
何度も胸がつまる想いでした。

そうです。若い世代が戦争体験に
積極的にかかわろうとする姿勢の
重要性を示している点こそが
本書の意義なのです。

第1章「広島」、第2章「長崎」、
第3章「沖縄」、第4章「ハワイ」と、
戦争全般に目を向けているため、
必ずしも深まりが
あるわけではありません。
これまで戦争に関心を持ち、
いくつかの書物を
読んでこられた方にとっては
目新しさは感じないかも知れません。

しかし見方を変えると、
戦争が広い地域に
悲劇をもたらしたことを
再確認できる一冊と言えるはずです。
そういう意味では、
本書は戦争にかかわる本の
「入門書」ととらえるべきなのでしょう。

中学生にぜひ読んで貰いたい一冊です。
そしてここから
日本が背負っている負の歴史に
まなざしを向けていって
欲しいと願います。

岩波ジュニア新書からは
「1945年8月6日」(ヒロシマ)、
「15歳のナガサキ原爆」(ナガサキ)、
「戦争と沖縄」(沖縄戦)、
「東京が燃えた日」(東京大空襲)、
「中学生の満州敗戦記」
(終戦直後の満州の混乱)等、
太平洋戦争の戦禍・戦渦について、
テーマを絞ってわかりやすく
丁寧に描かれている良書が
数多く出版されています。
それらに繋がる入口として
本書を薦めたいと思います。

(2019.12.14)

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